「供給者=需要者」という詭弁(ネタ帳から・1)

それではさっそく「『非論理』と『不誠実』のメモ(今後のブログのネタ帳として)」のsuterakuso氏のコメント(2014/10/02 07:46投稿分)の添削です。
その際、ただ添削だけというのももったいないので、suterakuso氏の「事実とは異なる思い込み」を一つ取り上げ、「『ネタ帳』からの経済ネタ」として書いてみたいと思います。

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(以下、彼=suterakuso氏です)

>タクシー業界だけを直撃すると考えなければ「焼け太り」になるとしか考えられないからな訳で。
「はい無駄。」
なにが?って、この一文そのものが。
だって、私の出した条件は

1.「いつ、誰が、“タクシー会社の法人税の軽減を穴埋めする消費税増税が、タクシー業界「だけ」を直撃する”と主張したのか」という質問に対する、先に私がしたような「(根拠となる引用を示した上での)読み返したところ、2014/08/18 21:44 でした。」のような回答。
であって、彼がどう考えるか、なんかではありませんから。

にしても、彼はなぜそんな「『焼け太り』になる“としか考えられない”」、つまり“考える”などということをわざわざしてしまったのでしょう?
そしてこの「無駄」が、何か回答であるかのように思ってしまったのでしょう?
それは、以下読み進めていくとわかります。

>では、そもそも「その穴埋め資金を消費税でまかなう」とはなんの「穴埋め」なのか?と。
>それ、「分かりやすい」話か?と。
>財政の穴埋めと解釈する方が、一見、分かりやすい。
法人税減収分と補助金分と考えればよいだけだから。
>っで、そう考えた訳だが。
>なに? タクシー台数を増やす資金の「穴埋め」なの?

さてここで、そもそも私が何と書いていたか、あらためて引用してみましょう。

(以下、私のエントリー本文)

>唐突ですが「この不況下の日本で、タクシー業界を再建するため、国・自治体の政策はいかにあるべきか」について考えてみましょう。

>その際、「競争がより良いサービスを生み、それによって消費者の支持を取り戻せば市場は拡大する」とか「成長のためには、まずは全体のパイを増やさなければならない」などと考えて、「タクシー会社の法人税を軽減」するなどして「タクシーの台数を増やす」、しかも「その穴埋め資金を消費税でまかなう」政策を実施することにしたら・・・

(引用ここまで)

「『タクシー会社の法人税を軽減』するなどして『タクシーの台数を増やす』」とは、もちろん「タクシーの台数を増やす分の資金を法人減税で賄う」という意味です。

(↑赤字部分加筆修正:10/08)

(これを「『法人税を減税する』と『タクシー台数を増やす』とが並列である」とするのは、日本語の解釈として誤りです。)
そして、その直後に「しかも「その穴埋め資金を消費税でまかなう」政策を実施する」と書いているのですから、「その穴埋め」の「その」が指すものは当然「タクシー台数を増やす資金の『穴埋め』」となります。
私の喩え話は、したがってこの解釈しかあり得ず、つまり「それがある現実の問題を説明する喩え話として、そもそも設定自体がおかしい」と言うのならまだしも、「財政の穴埋めと解釈する方が」などと「私の喩え話とはおよそ関係のない話」を書き始めてしまったから、私から「改竄」と指摘されてしまったのです。

なぜ、こうなってしまったのでしょう?
↑で私は、

>これを「『法人税を減税する』と『タクシー台数を増やす』とが並列である」とするのは、日本語の解釈として誤りです。

と書きました。
しかし彼は、そういった日本語の基本的用法を乗り越えて

>財政の穴埋めと解釈する方が、一見、分かりやすい。法人税減収分と補助金分と考えればよいだけだから。
としてしまいました。

今までの彼のコメントを振り返るに、彼はこのような「日本語を『その構造のみを頼りに、書いてある意味を正確に読み取る』ことが苦手である」と「しか考えられ」ません。
つまり、「『穴埋め』という単語と親和性のある『法人税減収分』という単語に引きずられて誤った解釈をしてしまった、と「しか考えられ」ないのです。

(これは、以前紹介した「ひとのことはいいんだよ」さんのブログ記事で「27 ■ああ、なんだ suterakusoのコメントをもとに、反省しない日本人に反省しないでいいって言っているだけなのね。でもね、人のコメントをだしにこの文体で書かれると、実際、ケチつけられてると思うわけね。っで、反省しない奴、さげすんでるな。ぼくちんもだなって思うわけ。不自然? 以上。 おかげで高市早苗を見直したよ。」と書いていることも、この推測の“補助”としました。おそらく彼は、彼自身にとって「不自然」な前提などは、たとえ他人の喩え話の前提であっても正しく読み取ることができないのでしょう。)

ちなみに「それがある現実の問題を説明する喩え話として、そもそも設定自体がおかしい」という話については、彼自身が今回のコメントの後半に書いているのですが、もちろんというかやっぱり「彼の書いていることの方がおかしい」。

>そもそも、「穴埋め」が必要なのに、タクシー台数を増やすのか?
これは私もそう思います。
しかし、小泉行革の流れとして現実に実行されたのですから、彼は私なんかにではなくその当時の政策実行責任者(最高責任者は石原あたり?)に文句を言うべきでしょうね。
・・・というかこれ、リフレ派/インタゲ派にとってブーメランになるっていうのをわかってて書いてるんでしょうか?
つまり、

「そもそも、「金融緩和」が必要なのに、生産を増やすのか?」
(念のために書いておきますが、私が全ての経済局面において↑のような事を考えているという訳ではありませんからねw)

>さらには、増やしたとしても、その後の減価償却のコストを軽減できると考えられる。

需要を超えて増やしてしまうと、その後の減価償却のコストは当然増加します(正確には償却期間が長くなる/なぜなら1台当たりの“あがり”が減少してしまうから)。
それなのになぜ「減価償却のコストを軽減できると考えられる」のか?
きっと彼にとっては説明不要なくらいに「分かりやすい」話なのでしょう。

>ま、「分かりやすい」話にはならない。
彼のような人にも「分かりやすい」話がかけるよう、今後一層精進したいと思っています。

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>それから、指摘に対する次のコメント↓こそ、「改竄」でない? でも、そこまでしもおかなしな話をしている。
(funaborista注:「そこまでしもおかなしな話」については「そこまでしてでもおかしな話」のタイプミスと一応解釈することにします。それとも「そこまでしてまでも」かな?まあそれでもおかしな日本語なので、私の解釈は間違っているかもしれませんが。)

>>「どの産業も均等にその影響を受ける」のに、他の企業はタクシー業界総取りを指をくわえてみているとでも?
タクシー業界以外の「企業の勝手」ってのはずいぶんとお人好しなんですね!

>>・・・って、つまり実際はそんなことはなくって、法人税減税に充てられる消費税増税分ってのは「企業全体で分け合う」にことになるわけなんですが、・・・これって結局のところ、近年行われている「法人税減税→消費税増税の置き換え」に他ならなくて、しかしそれが原因で「供給過剰=需要不足」に陥っているわけです。
で、私の喩え話は「日本の企業全体をタクシー業界に置き換えた話」なんであって、もちろん雑草Zさんはそのことを理解しているから「わかりやすい内容」、しかしsuterakusoさんは理解してない(というより理解したくない?)からこそ「産業にしめるタクシー業界の割合は〜」ってことなんでしょうねぇ、きっと。

>「他の企業はタクシー業界総取りを指をくわえてみているとでも」なんて言っているが、「穴埋め」をするという設定は、あんたの設定だろうが。
さて、彼が(故意に?不注意で?)省略した部分も含めて、いま一度私の文章を引用してみましょう。

(ここから私の文章引用)

>ま、でも今回大大大サービスで、あなたの設定にのってみましょうか。
>つまり、「実質可処分所得が減った分の100億円は、全部タクシー業界の法人税減税に充てられる」、なぜなら「企業の勝手でそうなる」のだ、と。

>・・・えっ、本当にそうなるの?
「どの産業も均等にその影響を受ける」のに、他の企業はタクシー業界総取りを指をくわえてみているとでも
>タクシー業界以外の「企業の勝手」ってのはずいぶんとお人好しなんですね!

(以下省略・引用ここまで)

つまり、私が今回の喩え話で定義した「穴埋め」とは、どこまでいってもこれまで再三書いてきた(今回も書いた)通り、「タクシー台数を増やす資金の『穴埋め』」なのであって、それに対してここでの引用コメントで(大大大サービスで)書いているのは「あなたの設定=suterakuso氏の設定」、つまり「実質可処分所得が減った分の100億円は、全部タクシー業界の法人税減税に充てられる」という設定に基づくと・・・という話なのです。
こんなにわかりやすく続けて書いているのに、どうやったら一部引用を省略した上で

>「穴埋め」をするという設定は、あんたの設定だろうが。
などと、恥ずかしげもなく「改竄」に「改竄」を重ねることができるのでしょう┐('〜`;)┌

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さて、ここからが「ネタ帳」の本編。
彼の誤りを指摘するだけでなく、「経済のちょっとしたお勉強タイム」にもなってます。

>「私の喩え話は『日本の企業全体をタクシー業界に置き換えた話』なんて書いているが、だったら、供給者はダイレクトに需要者になり、需要減にはならないだろうが。

なりません。
今回のように「日本の企業全体をタクシー業界に置き換えた」場合、「供給者はダイレクトに需要者に」なんか絶対になりません!

しかし困ったことに、このような「デタラメ」を書いているブログ・本がチラホラ見受けられるのもまた事実なのです。

なぜ「供給者はダイレクトに需要者に」ならないのか?
それは、「供給者=タクシー会社」と「需要者=タクシー会社従業員」の間には厳然とした「壁」が実態/実体として存在するからです。
(もちろん、「タクシー会社がタクシーを購入する時」には、タクシー会社は「需要者」となりますが(その場合「自動車メーカー」が「供給者」)、今回の彼の話とは全く関係がありません。)

もし、結果的にでも「供給者=需要者」になる、と言いたいのであれば、その最低限の前提条件として「供給者(タクシー会社)が上げた利益は全て需要者(タクシー会社従業員)に配分される」としなければならないのですが、現実はそのようなことは起こっておらず、「供給者」と「需要者」の間には「壁」が存在し、それ故に企業は「内部留保」をし「再投資」ができるのです。
しかし、まさにそれこそが企業というものの機能であって(つまり成長の強力な原動力になり得る)、それ自体は私も悪いことだと考えてはいません(むしろ素晴らしいことだとすら考えています。ただし、あくまで「使い方」次第ですが)。

要するに、企業には「実体がある」のです(法人実在説)。

しかし、「企業には実体がない」という考え方(企業の富や負債は、最終的に全て自然人に行き着くという考え方)も一方で存在し、実は(歴史的経緯もあって)法人税法自体がこの「法人擬制説」に基づいてつくられています。
そのため実際には、「日本の判例・学説においては法人実在説がやがて主流となった。この結果、法人擬制説に傾倒している日本民法を、法人実在説的に解釈していくということになった。」と、法律自体は「法人擬制説」でつくられているにもかかわらず、実際の運用には「法人実在説」の考え方が採用されているのです(この方が実態に合っているのですから、当然と言えば当然です)。

ところが経済(学)界の一部では、いまだに「法人擬制説そのもの」がまかり通っていて、それは特に「法人の自由を重視する立場=新自由主義者」たちによって、つまりは「法人税を軽減・消滅させ、企業の自由をより拡大する」ために、「法人税は間違った税である」などという主張が繰り返しなされているのです。

(11/4追記)

後から読み返して、どうも誤った印象を与えかねないと思い追記します。
「ところが経済(学)界の一部では、いまだに「法人擬制説そのもの」がまかり通っていて、」
と書きましたが、この「一部」とは実は「主流」であって、つまり「法人擬制説が理屈としても正しい」とする経済学者の方が実は多数派なのです。
(例えばWikiの「法人税」内の「法人擬制説」を参照のこと)

(追記ここまで)

そんな彼ら(新自由主義者たち)は、実はしかし、互いに「矛盾」した主張をしています。
なんと彼らは「企業の富や負債は、最終的に全て自然人に行き着く」と言う一方で、「企業は自らの利益を再投資にも再配分にも自由に配分できる(べきである)」という「互いに相矛盾する主張」を「同時に」しているのです。
「再投資にも再配分にも自由に配分できる(べきである)」というのであれば、それはもちろん企業が「実在」する証拠となってしまうのですが、・・・そんな矛盾にはお構いなし、彼らはそれらを都合よく使い分け、あるときは「擬制説」、ある時は「実在説」を採用し、そして企業により有利なように・・・つまりは「詭弁」を弄しているのです。

ところで、「企業の富や負債は、最終的に全て自然人に行き着く」という考え方、そして「企業は自らの利益を再投資にも再配分にも自由に配分できる(べきである)」という考え方、・・・どこかで見たことがありませんか?

そう、彼の主張する考え方

>ま、法人税って、できの悪い税金だと思いますけどね。イメージは、利潤マシーンに払わせるって感じでいいかもしれないけど、結局、誰か人間に転嫁されるんですから。
が、まさに「法人擬制説」そのものであり、

>あ、それから、法人税の増減を受けて企業がどうするかは、「企業の勝手」ですから。
が、まさに「法人実在説」そのものなのです。
そして、これら2つを同時に主張する、これこそまさに「新自由主義」そのものなのです。

要するに彼は、正真正銘「新自由主義者」そのものなのです。
(でも“大御所”に比べればまだまだってのは、さすがの私も認めていますよw)


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まああとは「蛇足」ですかね。

>あるいは、国全体がタクシーで働いているのに、なんでタクシー台数を増やすのか?
私もそう思います。

>タクシーが足らなくて雇用が少ないんなら、それはそれでタクシーを増やすことも悪くないしね。
たとえ採算の取れない雇用であっても、増やすことは悪くない?
なぜそこまで生産=供給にこだわるのか?
なんか「セイの法則」を間違って信じている予感が・・・、いや、やめておきましょう。
この程度でも、彼にとっては「完全にスペック・オバー!」。

>とにかく、なにも「分かりやすく」などない。
そりゃ彼の頭にとっては、ね。

>要は「詭弁」。

以上に示した通り、今回の一連の話の中で、私の主張に「詭弁」は存在しません。

存在するのは、「法人擬制説」と「法人実在説」を同時に主張する「新自由主義者」による「詭弁」だけなのです。

>ちなみに、国際競争力の話はすり替えでもなんでもない。

彼がそう思うんならそうなんでしょう、彼の頭の中ではね。
あとは彼が自分自身のブログで、なんか説明らしきものでもすればよろしいのだと思います。