経済用語の基礎知識「需要」(ネタ帳から・2)

私の時代でも(おそらく今でも)、中学校の社会科の時間でほんの少しだけ「経済」をお勉強して・・・でも本当にほんの少しでしたから、その内容はまさに厳選されたものでした。
そんな中学生向け経済であっても必ず取り上げられるであろう、私も習った記憶がある「経済用語」が、今回取り上げる「需要」です。
誰もが「需要と供給」とか「均衡価格」とか、グラフを使ってお勉強しているはずです。
それなのに、意外と勘違いして覚えている方が多くいらっしゃるようで、ネタ帳の方(suterakuso氏)も、そのコメントから察するに・・・

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手始めに、「需要」という言葉の意味をネットで検索してみましょう。
そうすると

「家計・企業などの経済主体が市場において購入しようとする欲求。購買力に裏づけられたものをいう。」

「財に対する購買力の裏づけのある欲望。」

などと出てきます。

ここで大事なのは「裏づけ」という言葉。
経済学においては、例えば私のようなビンボー人が、いくら欲しい欲しいと「欲望」をアピールしたとしても、悲しいかな、それは賃金という「裏づけ」(=支払能力)の範囲内でしか「需要」とは認められないのです。
(つまり、もし両方とも私が欲しがっているとして、自転車については「需要がある」とされますが、自動車については「需要がない」とされてしまうのです。)

つまりは 「欲望」+「支払能力」=「需要」 。

(ちなみに「潜在需要」という言葉もあって、上式のどちらが欠けても同じような気がするのですが、経済学では「欲望」だけが欠けて「支払能力」だけの状態を「潜在需要」と呼び、「支払能力」が欠けて「欲望」だけの状態を「潜在需要」とは呼びません。ビンボー人にはキビシーのです。)

そして、現在の日本経済における「需要対策」という言葉は、そのほとんどが「賃金引き上げ」のような「具体的な裏付けの増加政策」という意味で使われています。
なぜなら、現在の日本は「深刻な需要不足」(=購買力不足)だからです。
(もし、「貯蓄額↑の分だけ消費↓をどうにかしたい」のならば、「欲望を増加させること」が「需要対策」となります。)

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さて、suterakuso氏のコメントをここで確認してみましょう。
(初めの>>は私の文章です。)


>>そもそも「『需要不足』がいまや日本限定の話ではなく世界経済全体の問題である」訳なんだが、彼は理解してない・・・いや、したくないんだろうなあ。

>そりゃそう! 世界には、あまりにも多くの貧困があるのだから! 需要はいくらでもある! それに応えることこそが成長である! それを限界などと言って放棄するなどあり得ない! そんな奴は「正義」を語るな! そういうことです。


「世界には、あまりにも多くの貧困がある」の直後に、なぜか「需要はいくらでもある」と書かれています。
もちろん「貧困」な国・地域には、悲しいことですが、充分な「需要はありません」。
「貧しい」=「裏づけがない」からです。
あるのは「需要」ではなく「欲望」なのです。


ではsuterakuso氏は、実はコメントの一部を端折って書いていて、つまり

「世界には、あまりにも多くの貧困がある」しかし世界を見渡せば、例えば貧困とは無縁の先進国には「需要はいくらでもある」のだから、それを途上国に再配分すれば途上国の需要となる。

ということを書いている、のでしょうか?
しかしその解釈は、現在の世界経済の認識としては間違っています。
というのも、そもそも私が書いた「『需要不足』がいまや日本限定の話ではなく世界経済全体の問題である」というのは、実は「先進国の需要不足の話」だからです。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NBYORF6JTSEB01.html

「需要はいくらでもある!」などと寝言を言っている場合ではありません。
世界中で「需要は全然足りない!」のです。

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「なぜ需要は足りないのか?」とか「ではどうすればいいのか?」とか、それらについては、すでにここ数回のエントリーに何度も書いていますので、今回具体的には書きません。
そのかわり、あの文章に私なりの反論を書いてみることで、今回の「ネタ帳から」の締めとさせていただきます。


>>そもそも「『需要不足』がいまや日本限定の話ではなく世界経済全体の問題である」訳なんだが、彼は理解してない・・・いや、したくないんだろうなあ。

>そりゃそう! 世界には、あまりにも多くの貧困があるのだから! 需要はいくらでもある! それに応えることこそが成長である! それを限界などと言って放棄するなどあり得ない! そんな奴は「正義」を語るな! そういうことです。


なんだそりゃ!
世界には、あまりにも多くの貧困がある!
しかも先進国は、過度の生産過剰に陥っている!
つまり需要は全然足りない!
それに応えることこそが需給バランスの是正、そして再配分である!
それを「企業の勝手」などと言って放棄するなどあり得ない!
そんな奴は「正義」を語るな!
そういうことです。