せめてこのくらいは

GW前だったと思います。


TVのワイドショーで、5/5・6のスーパームーンと5/21の金環日食について、誰かが「今年は、こんなめずらしい現象が続けて起こるなんて、なんか不思議ですね。」と言いました。
funaは「うん、台本通りの前フリなんだろうけど、なかなか自然な感じだったな。ま、ここで誰かが「いやいや、実は月の軌道というのはですね、・・・」なんて横から口を挟むんだろうけど。」と思ったのですが、・・・特に話が広がるわけでもなく、そのままスルー。
そして次の話題へ。
funaが「自然だ」と思ったのは、ただ単に言った本人が心からそう思ったから、だったようです。




・・・・・・・・・・


スーパームーン金環日食、もちろん偶然なんかではなく、両者には関連があります。
そのことに触れたブログのエントリーも数多くあって・・・と書く予定だったのですが、検索したら思いのほか少ないのでビックリ。
その中でも↓のブログ記事が、図もあってシンプルにわかりやすく書かれていると思いました。


http://blogs.yahoo.co.jp/ccomori/63676835.html


よーするに、楕円軌道の一番近い所にいた(5/5〜6)半月後だから、一番地球から遠い所にいる(5/21)、ってこと。
でも、それじゃあその半月後だってスーパームーンじゃないの、と言われそうですが、実際にはそうはなりません。
というのも、地球の公転などいろいろの影響があったりで、月の軌道っていうのは時とともに同じ楕円軌道上から少しずつズレていて、その分一番近い地点が満月の位置から少しずつズレてしまうからです。


月の軌道が楕円であるということは、ニュートン運動方程式から導くことができます。
またそれを導く過程で、楕円軌道、放物線軌道、双曲線軌道のそれぞれが、すべて「本質的には同じ」であることがわかります。
上記は高校物理程度の内容ですが、実際の授業では「自力で運動方程式を解くのはレベルが高すぎる」または「そこまで時間に余裕がない」として、結果のみを「ケプラーの法則」として暗記するだけのことが多いようです。


funaとしては、理系・文系問わず全ての人が、一生に一度は「運動方程式を解く」という体験をする「べき」だと思っていますし、また、今の日本社会でどのくらいまでが「共通知」「日本人の常識」であって欲しいか、と聞かれたら、・・・そうですねえ、数学であれば「オイラーの贈物」(http://www.amazon.co.jp/dp/4480086757)が理解できる程度であって欲しいなあ、なんて常々思っています。
(つまりは「三角関数と指数関数は本質的に同じ」というあのあたりです。ここまでは、大学でのいわゆる「高度に抽象化された数学」ではなく、ダン・コーガイの「がんばれば、誰でもここまでは到達できるという点」だとfunaも思います。本の宣伝のための参照→http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100223/212219/
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51386348.html


(追記:「博士の愛した数式」を失念しておりました。あれに出てくる「オイラーの公式」のことです・・・って言って、もともと知ってた人以外でどんな式か覚えている人ってどのくらいいるんだろう。
そういえば小針晛宏さんは、オイラーの公式のことを「マイナスはいいの、いっぱい愛情」って表現していらっしゃいましたね。)


まあfunaの「こうあってほしいなあ」は、現時点ではあまりに現実離れしているかもしれません。
でも、
・さっきの「スーパームーン金環日食」の話、とか、
スーパームーンの「『通常の見え方から14%大きく、明るさ従来比30%増し』という割に明るく見えなかった」って話は「明るさ=面積比=1.14×1.14=1.2996」ってことなんだろうけど、人の感じ方ってのは対数関数的だからねえ、とか、
そのくらいであれば、工夫次第で今すぐにでも何とかなるような気がするんです。
(まあ「対数」ってのに触れないまま学校を卒業する人が多い現状、今すぐにでもってのはやっぱり大げさかもしれませんが。)


・・・・・・・・・・


「せめてこのくらいは社会の常識であってほしい」というのは、人それぞれにあると思います。
funaの↑は「人生がもっと楽しくなる」とか、一番にはそういう理由でしたが、他に「『有権者として』このくらい知っておいてもらわないと困る」っていう「せめてこのくらいは」ってのもあるかと思います。


そういう意味で言うなら、例えば理系的な話題であれば、


ソルビン酸カリウムの毒性はソルビン酸の毒性にカリウムの毒性が加わったもの」
上の主張が、「たとえソルビン酸の化学式がわからなくても」荒唐無稽であることがすぐに理解できる


ってのは、funaの考える「せめてこのくらいは」のうちの1つです。
(内容的には中学校レベルの話です。ただ学校では↑が理解できるよう意識して教えられていないかもしれません。)
↑が理解できない有権者が多い状態で、


「リサイクルのプランはA、B、Cどれがいいか」を住民投票で決めよう


なんてのは、まさに「無謀の極み」と言えるでしょう。
実際の選択では、A、B、Cの違いについて一人一人が全てを把握することは不可能で、「○○教授がBを推しているから」っていう判断になる場合もあります。
ただそれでも、↑程度が理解できないようでは、肝心の「○○教授」を正しく選ぶことができません。
とりあえず「市民運動側」であればいいのか、というと、そういう訳でもありません。
↑の「荒唐無稽な主張」とは、実は「買ってはいけない」(http://www.amazon.co.jp/dp/4906605036)の著者が、内容の誤り(「ソルビン酸ソルビン酸カリウムは違う物質」だから毒性も違う)を指摘された時の「言い訳」(=恥の上塗り)なんですから。


・・・・・・・・・・


文系的な話題では、・・・funaは文系の世界に全く詳しくないので「人生がもっと楽しくなる」の「このくらいは」ってのは正直わかりません。
しかし、「有権者として」の「せめてこのくらいは」(つまりは「ソルビン酸」レベルの話)っていうのは、最近イヤになるほど目にします。


>不起立でも良いことを世の中に訴え、議員に訴え、議会で認めさせること。それが表現の自由


「議会で認めさせること」が「表現の自由」?
「不起立」という「表現」の自由は「議会」で認めさせなければならないの?
こういうのが理解できなくても、司法試験であれば受かることもあるみたいですが、「有権者」として一票を行使するのであれば、「せめてこのくらいは」理解してもらわないと困ります。


>皆さん公務員になるときに服務宣誓されたと思う。主義主張や思想良心、違うなと思っても最終的に決まれば、「法治国家」で決定されれば従わなければいけない。


「国家権力の行使の仕方を、あらかじめ法によって定めておく」ってのが「法治主義」であり、そういう国家を「法治国家」というんです。
「従わなければいけない」なんてのは、「法治国家」かどうか、などとは何の関係もありません。
法治国家」の反対は「人治国家」。
じゃあ独立を目指しているらしい大阪市はいったいどっちなんだろう、と思ったら


>だから一般論として、入れ墨が悪いとか、何が悪いとか、それはもう『世間の風潮』の中で個々人が判断すればいいだけの話でね、公務員というのはやっぱり違うと、『まだ』。そこは『許されない』と。


『まだ』『許されない』とは、「法でまだ(許すと)定めていないから=禁止規定を廃止していないから」ではなく、「『世間の風潮』が、『まだ』そこは『許されない』と判断したから」ということ、言い換えれば、「『許す』『許さない』の判断根拠が『法に拠っていない』」ということです。


橋下曰く、大阪市は「人治国家」とのことです。


・・・・・・・・・・


ここまでひとごとのように書いてきたfunaにも、ホントウは知ってなきゃヤバいのに知らない「せめてこのくらいは」ってこと、きっとたくさんあるんだろうなあ。
で、そういうものの「必要十分パッケージ」は学校教育のはずなんだけど、今思えば学校教育の内容って現実の社会が要請する必要な質・量に対してあまりに少なすぎるし(↑の「人の感じ方ってのは対数関数」って、例えば騒音問題の理解にも必要なんだけど、対数自体が義務教育範囲じゃないとか)。
これからのfuna自身のためにも学校以外でお勉強するところをみつけなきゃ、と思って調べていたら、なんと文系の世界に詳しくないfunaのために(んな訳ない!)、大阪市近現代史を学べる施設を設置してくれるっていうんです。
え、大阪市?どうして「学校予算を削減する」大阪市がわざわざそんな施設をつくろうとしてるの?と思ったら、・・・「両論を学べる施設」(http://www.asahi.com/national/update/0511/OSK201205100200.html)なんだだそうで。
なるほど、学校では「教科書には書けない歴史」を教えることはできませんからね!


・・・・・・・・・・


金環日食まであと数時間。
天気予報は曇りだけれど、果たして運よく晴れてくれるかどうか。
今日の「こうあってほしいなあ」は、祈るしかありません。


翻って、ここんとこfunaのネタも大阪方面が多くなってしまっていますが、こちらが晴れるかどうかは運ではありません。
明日の「せめてこのくらいは」は、私たちで努力するしかありません。


 


(おまけ)
↑の
「『ソルビン酸カリウムの毒性はソルビン酸カリウムの毒性が加わったもの』
上の主張が、『たとえソルビン酸の化学式がわからなくても』荒唐無稽であることがすぐに理解できる」
っていうやつですが、
今回エントリー中では、あえて理由等を書きませんでした。
もし「わからない」という方がいらっしゃいましたら、いい機会ですので各自で一度調べてみてください。
私がさっきネット上でこの話題の周辺を検索したら、正解も不正解も実にバラエティに富んでおりました。
玉石混交の中から正解を選べるのはリテラシーの一つ、かもしれません。
間違った解説に魅力を感じたとしても、それは例えば「新自由主義」に魅力を感じるフリーターの心を知るのに役に立つ、かもしれません。


そして、「ソルビン酸〜」について「そんなのわかってるよ」という方。
正しい理解のための解説を、是非コメント欄に投稿してください。
正しい解説のネット記事・ブログの紹介でもいいですし、
「正しくない」ものの紹介だって大歓迎です。
(むしろ「間違い」から学べることの方が多いかもしれません)
もちろん、「調べてわかった」方からの「勉強の成果」の投稿も期待しています。


↑のようにコメントを催促しちゃいましたが、橋下周辺や、特に関係ないこと(FC東京のこと)だっていいんですよ。